こんにちはみにまるです。FP協会主催のFP1級実技試験(筆記試験)対策で昨年(2021年)11月から施行の金融サービス提供法(旧金融商品販売法)についてまとめていきます。
時事的な話題は出題されやすい傾向があるため、緑本には載っていませんが、ここで取り挙げます。
- 金融サービス提供法と消費者契約法、金融商品取引法の比較
- 金融サービス提供法改正、「金融サービス仲介業」創設の背景
- 金融サービス提供法の保護対象、法律が適用されるケース、法律の効果、立証責任(300字程度)
- 金融サービス仲介業の説明(300字程度)
金融サービス提供法と消費者契約法、金融商品取引法の比較
金融関連法規の混同しやすい3つの法律を比較して表にまとめました。
金融サービス提供法 | 消費者契約法 | 金融商品取引法 | |
---|---|---|---|
適用範囲 |
預貯金・信託・保険・有価証券・デリバティブ取引・FX取引 |
すべての消費者契約 |
有価証券関連商品・デリバティブ取引・外貨建保険・変額年金保険・外貨預金 |
範囲外 |
国内商品先物取引・ゴルフ会員権・金地金 |
一般的な預金・保険 |
|
保護の対象 |
個人及び事業者(重要事項の説明義務は特定顧客を除く) |
個人(事業者は除く) |
個人及び法人(投資家を「プロ特定投資家」と「アマ一般投資家」に区分) |
法律が適用されるケース |
① 元本割れや当初元本を上回る損失が生ずる価格変動リスクなどの重要事項の説明義務違反があった場合 (顧客が特定顧客である場合や、顧客が説明を要しない旨の意思の表明をした場合は説明は不要) ② 必ず儲かるなどと断定的判断の提供禁止に反した場合 |
① 不実告知(取引の重要事項について事実と異なることを告げる) ②断定的判断の提供により勧誘した場合 ③ 不利益事実の故意又は重大な過失による不告知) ④ 不退去(消費者の住居等から退去しない) ⑤ 監禁、退去妨害(消費者を勧誘場所から退去させない) ⑥ 過量な内容の契約(高齢者の判断能力の低下につけ込んで大量に商品を購入させる) |
・適合性の原則 ・断定的判断の提供禁止 ・契約締結前の書面の交付義務および契約締結事の書面の交付義務の厳格化(アマ一般顧客には書面交付不要の意思表示があっても交付義務は免除されない) ・インサイダー取引規制 |
法律の効果 |
損害賠償責任(無過失責任、元本欠損額が損害額と推定する) |
・消費者は取り消すことができる(追認できる時から1年/契約締結事から5年で消滅) ・事業者の損害賠償責任を免除する条項や消費者の利益を不当に害することとなる条項は全部又は一部が無効となる |
違反すると行政処分や刑罰の対象 |
立証責任 |
民法の原則通りに原告に立証責任があるが、金融商品販売業者が顧客に重要事項を説明しなかったこと、被害発生の事実を示すことのみで損害賠償請求が可能となり、元本欠損額をその損害額と推定し、これにより原告の立証負担の軽減が図られている |
民法の原則通り原告に立証責任あり |
|
特定顧客に対して |
重要事項の説明義務は免除(一般顧客も説明不要の意思を表明した場合は説明不要) |
プロ特定投資家には適合性の原則や説明義務・書面交付義務は適用されない |
金融サービス提供法改正、「金融サービス仲介業」創設の背景
金融サービス提供法は2020年に金融商品販売法から改称改正され、昨年11月より施行されています。この改正された金融サービス提供法では金融サービス仲介業の創設と資金移動業の規制の見直しがされています。
金融サービス仲介業とは、「預金等媒介業務、保険媒介業務、有価証券等仲介業務または貸金業貸付媒介業務のいずれかを業として行うこと」とされ、改正前はそれぞれの分野ごとに個別に許可・登録が必要でしたが、改正後は1回の登録で銀行、証券、保険の3つの分野すべてで仲介が可能となります。
https://www.faa.or.jp/cms/wp-content/uploads/2021/06/20210610_faa_seminar_1.pdf
「金融サービス仲介業」創設の狙い
・改正前は分野ごとに許可・登録を受ける必要があり、業者にとって負担が大きかったため、この負担を軽減する
・オンラインでのサービスの提供が可能となるなど多種多様な金融商品・サービスをワンストップで提供することで、多様化した利用者のニーズに応える金融商品サービスを横断比較できる環境を整備し、利便性を向上させる
要点
・金融サービス仲介業者は金融サービスの媒介のみを行い代理は行わない
・ 特定の金融機関への所属は求めない(所属制の廃止)
・ 利用者財産の受入れは禁止
・ 仲介にあたって高度な説明を要しないと考えられる金融サービスに限り取扱可能
・ 金融サービス仲介業者は自らが顧客に対する損害賠償責任を負うため、その資力の確保のため保証金の供託等を義務付け
・ 金融サービス仲介業務に係る重要事項の説明の義務付け
・ 仲介手数料等の報酬の制限はないが、金融サービス仲介業者は顧客に対し仲介業務に関して受ける手数料、報酬等の額を明示しなければならない
金融サービス提供法の保護対象、法律が適用されるケース、法律の効果、立証責任(300字程度)
金融サービス提供法の保護対象は金融商品販売業者の顧客である個人及び事業者である。下記の義務を違反した場合、顧客は販売業者に対して損害賠償請求をすることができる。
① 元本割れや当初元本を上回る損失が生ずる価格変動リスク、権利行使期間の制限や解約期間の制限などの重要事項の説明義務違反があった場合
② 必ず儲かるなどと断定的判断の提供禁止に反した場合
重要事項の説明は「適合性の原則」により顧客の知識・経験・財産の状況・購入目的に照らして、顧客に理解されるために必要な方法・程度で行う。
立証責任は原告にあるが、原告は販売業者が重要事項を説明しなかったこと、被害発生の事実を示すのみで損害賠償請求ができ、元本欠損額をその損害額と推定することにより原告の立証負担の軽減が図られている。(326文字)
類題は2018年に出題されています。
問12 金融商品販売法 2018年9月実技(資産設計)【1級FP過去問解説】
金融サービス仲介業の説明(300字程度)
金融サービス仲介業とは、1回の登録で銀行、証券、保険のすべての分野の仲介が可能となる業態である。この改正により登録にかかる業者の負担が軽減され、多種多様な金融サービスのワンストップ提供が可能になることで顧客の利便性向上が期待される。金融サービス仲介業者が提供可能な商品は仲介に当たって高度に専門的な商品説明を要しないと考えられるサービスに限定されている。金融サービス仲介業者には仲介業務に係る重要事項を説明すること、損害賠償責任に備えて保証金の供託が義務付けられている。金融サービス仲介業者は内閣総理大臣の登録を受ける必要があり、顧客に対し仲介業務に関して受ける手数料、報酬等の額を明示しなければならない。(303文字)
参考:
「金融サービス仲介業」創設の背景および概要について
金融商品の販売等に関する法律について
金融サービス提供法 | 保険の用語集 | 人気の保険を比較!【保険市場】